1.基本情報
・訪問地:青ヶ島(あおがしま/東京都)
・訪問時期:2024年1月
・訪問のきっかけ、興味を持った理由
この島を知ったきっかけは、二重カルデラという世界でも珍しい火山地形。
その特異な地形が、まるで海に浮かぶ船のように見えたのが印象的で、昔から憧れていました。
人口は約160人で日本で最も人口の少ない自治体です。
他の市町村と合併もせず、絶海の孤島である青ヶ島単体で自治体が構成されていることに、ますます興味をそそられました。
またアクセスが難しいことでも有名な島です。
ちょうど八丈島に行く機会ができ、日程的にも余裕があったので、これを機に訪れてみることにしました。
2.地域の概要
■ 地形や立地
青ヶ島は東京から南へ358km、伊豆諸島最南端の島です。
フィリピン海プレート上にある火山島で、最大の特徴は二重カルデラと呼ばれる地形。
富士山のような形の火口丘(丸山)、その周りには凹地のカルデラ、それをぐるっと囲むのが外輪山です。
丸山には縦方向に緑の林の筋があって、まるでプリンかゼリーを逆さにしたよう。
丸山の近くでは、地熱を利用したサウナや蒸し料理のできる地熱釜が整備されています。
人々が暮らす集落はは高台になった島の北側に集まっています。
島は急な崖に囲まれており、海は常に荒れやすいため、船はしばしば欠航します。
空港はなく、アクセス手段は八丈島からの船か、定員9名のヘリコプターのみです。
■ 歴史的背景
青ヶ島に人が住むようになった正確な時期は不明です。
しかし、江戸時代から定住があったことはわかっています。
1785年には大噴火が起こり、島は一時無人となりました。
その後、約50年かけて島民が帰島し、火山と共にある生活を再び始めたそうです。
以降、限られた資源と厳しい自然環境のなかで、独自の文化を守りながら暮らしが続いてきました。
■ 現在の様子
現在は火山活動を見守りながら、生活が営まれています。
電気や水道などのインフラは整っており、古くからの製造方法を守る焼酎・青酎や、地熱を利用した ひんぎゃの塩 などの特産品も生まれています。
ただし、交通手段は非常に限られています。
定期船は欠航も多く、観光客の多くは1日1便のヘリコプターで訪れます。
そのため、島への訪問は自然と制限され、静かで穏やかな雰囲気が保たれているのかもしれません。
島の人々は観光客慣れしており、温かく迎えてくれますが、適度な距離感を保つ穏やかな接し方が印象的でした。
3.当時の印象や記憶
温暖で湿潤な気候(年間平均湿度は約85%!)を反映してか、家を見るのも植物を見るのも違った景色に見えます。
北側の集落でもそうでしたが、特に外輪山を越え、カルデラや丸山周辺に入った時です。
緑が濃くしっとりしていて、特にオオタニワタリという絶滅危惧種に指定されているシダ植物が南国感満載で、まるで違う国に来たかのような気分になりました。
集落の建物は見た目こそ本州と似ていますが、内装に違いがありました。
私が宿泊した宿では、部屋ごとに異なる建材が使われていました。
デザイン的なおしゃれのためではなく、資材の調達が困難な離島ゆえの工夫だと思います。
湿気対策のため、窓は開けないようお願いされており、建物を守るための切実な配慮も印象的でした。
建物を建てたり修復するだけで大変。ここに建物がある有難さを身をもって感じました。
丸山の周辺では、あちこちから地熱の蒸気が立ちのぼり、火山が生きていることを肌で感じます。
地熱を利用したサウナは建物内に入るだけで明らかに蒸し暑く、サウナ室に入るとさらに蒸し暑さが増して、子供が早く出たいと言うほどでした。
地熱で蒸した蒸料理も体験しましたが、卵や芋の風味が増して自然なうまみに体が喜んでいました。
地球という大自然の恵みやパワーをいただいたかのような体験でした。
宿には島内各所のライブカメラ映像が映し出されており、港の様子などがリアルタイムで確認できます。
こうした情報インフラの工夫からも、島の暮らしの工夫と防災意識が感じられました。
また、車の数が意外に多く、どうやって運んだのかと驚きました。
宿の方は、歩いて行ける距離にも車で移動すると笑って話していました。
役場の近くに保育園、小学校・中学校があり、近くには立派過ぎる遊具も備えられています。
島唯一の信号機は、子どもたちが将来本土へ出た際に交通ルールを守れるよう、教育目的で設置されているそうです。
4.ひとこと感想
私はヘリコプターで島に渡りましたが、予約はとても困難でした。
ヘリに合わせて宿を押さえる必要があり、出発数日前までスケジュールが読めないという緊張感があります。
また、アクセスは本州ではなく八丈島からとなるため、八丈島での滞在も前提になります。
だからこそ、島影がだんだん近づいてくるあの瞬間、断崖絶壁に浮かぶ緑の風景が目に入ったときの感動は忘れられません。
外輪山から見下ろすカルデラの風景、内輪山の丸山、そして自分の背後にある広い太平洋。
その場に立って、その空気を吸いながら眺める風景は、どんな写真や映像でも伝えきれない贅沢でした。
私がまた訪れたいと思う理由は、もちろんその風景の素晴らしさや、行きにくさゆえの達成感もあります。
でも何より惹かれるのは、ひっそりとした暮らしの中で、自然と向き合いながら生きる人々の姿です。
都会の暮らしに慣れてしまった自分には想像もつかないような自然との共生。
あるいは、自然との対話とも言えるような生き方が、この島にはありました。
それはきっと、人間の暮らしの原点に近いものなのかもしれません。
またいつか、そっと再訪したい。そんな場所です。