形のない仕事に確かな価値を ―島の調査で感じたこと

「不動産の仲介って、何にお金を払ってるの?」
そんな疑問を持たれる方、意外と多いかもしれません。

たしかに、私たち宅地建物取引業者(宅建業者)はモノを売っているわけではありません。
売主と買主の間に立ち、不動産の売買や賃貸がスムーズに、安全に行われるよう調整する仲介が主な仕事です。

でも、その裏には調査・確認・交渉・調整など、目には見えにくいけれど欠かせない仕事がたくさんあるんです。

今日はその一例として、塩竃市のとある島での現地調査について、お話ししたいと思います。

 

島の土地に、建物は建てられるのか?

今回調査したのは、宮城県内の島にある売土地です。
以前プライベートで近くまで訪れたことはあったのですが、仕事として向き合うと、見るべき視点はまったく違ってきます。

初めての現地調査ということもあり、思った以上に確認事項が多く、当初「1時間くらいで終わるかな」と思っていたところ、気づけば2時間ぎりぎりまで滞在していました。
慣れない場所での調査は、ひとつひとつの動きが慎重になります。

実際に足を運んで見て、地図や登記簿等ではわからない現地でしかわからないことの多さに気づかされました

 

ちなみにこの島には、飲食店や自動販売機がないため、食料や飲み物は持参しました。
「調査=図面とにらめっこ」というイメージを持たれるかもしれませんが、こうした準備や段取りも含めて、現場の仕事はリアルで地道な作業の連続です。

  

現地で見て、感じて、確認する

調査ではまず、土地の位置や形状を登記簿や公図(土地の形状、地番などを書いた図面)、ブルーマップ(住宅地図の上に公図などの情報が記入された地図)、Googleマップなどと照らし合わせながら確認していきます。

この作業、実はとても神経を使います。
なぜなら、間違った土地を売買することは絶対にあってはならないからです。
そのため、何重にも、何度も確認を重ねて進めていきます。

次にチェックしたのは、ライフライン(上下水道・電気・ガス)が整備されているかどうか
特に島という場所では引き込みが困難だったり、追加費用がかかるケースもあるため、非常に重要なポイントです。

加えて土地の高低差や地形(崖など)、現地に残っている物がないか、建築に支障のある障害物がないかなども、ひとつひとつ見ていきます。

そして最後に、「この土地は、買主が思い描く使い方に合っているか?」を想像しながら、島という環境で工事を行う際の段取りまでイメージして調査を終えました。

 

「島で暮らすなら?」と想像しながら歩く

調査中は、目の前の土地だけを見るのではなく、常に「ここに家を建てたらどうなるか」「この道を毎日通うとしたら?」といった想像を重ねながら歩きます。

買主の方がここでどんな生活を思い描いているのか。
工事の進め方は?
災害時はどう避難する?
そんなイメージを何度も行き来させながら、必要な情報を拾っていきます。

それは、ただの調査ではなく、未来の暮らしの地図を描くような作業と思っています。

仲介という仕事は、物件そのものを所有しているわけでも、建てているわけでもありません。
でも、お客様のこれからに関わる、とても責任の重い仕事です。

今回の島での調査も、一度行って見てきましたで終わるものではなく、地図と経験と想像力を総動員して行う、何層にも重なった作業でした。

 

おわりに ―調査もまた、まちづくりの一歩

今回のような現地調査は、華やかさこそないものの、不動産取引においてとても重要なパートです。
目立たない部分だからこそ、丁寧に・誠実に行う必要があります。

そして、この調査があるからこそ、買主さんに安心してその土地を引き渡すことができます。
売主さんにとっても、大切な土地が無事に使われることにつながります。

これからも、ひとつひとつの土地や建物と向き合いながら、誰かのはじまりを支える仕事と初心を忘れずに取り組んでいきたいと思いました。